海外在住研究者のつぶやき

専門外のことについて勉強した内容をまとめます.

2021-01-01から1年間の記事一覧

MMT理論の危うさ

金融緩和の副作用は通貨の価値低下であって、それはインフレ以外の形、例えば円の購買力低下としても現れる。 そのため、MMT論者の「日本はインフレはしてないので当面は刷りまくってOK」は極めて危うい。 「いや、インフレ率ではなく通貨価値の安定がMMTの…

移民受入とは「人間生産のアウトソーシング」である、という話。

欧米は人口(特に高技能労働者)を移民で補っているっていう話を知人にしたら、 「つまり、欧米は人間生産をもアウトソーシングしているってことだね」 と。言い得て妙である。 人材育成 人間生産のアウトソースという観点で考えると、欧米のMOOCsは「人材育…

「任期なし助教」の難易度と将来性

筆者は現在、海外にて学位取得を目指しており、学位取得後のキャリアとして日本の大学への就職も考えている。 特に、教育への関心、公募の競争率、そして家族の都合の関係から、地方国公立の「任期なし助教」に興味がある。 そこで、任期なし助教の関連情報…

日本語自然言語処理の研究は必要なのか

「最近は言語モデル、というものがあってね、そういう意味処理の問題も全部、解けるようになってるから、知らないなら勉強したほうがいい」とか言い放つエライ先生に、「もう一度、学校に入り直せ」と告げる代わりにどう丸く振る舞うか、というような訓連。—…

「日本語ネイティブ」というだけで不利な世の中に

最近、言語間格差を感じることが本当に多い。 例えばGoogle Home。日本語で使うと「わかりません」ばっかりなのに、英語母語話者である妻が使うと必要な回答がピンポイントで返ってくる。 その他、Google検索は当然のこと、YouTubeですらレコメンドの質が言…

「高齢化は経済成長に悪影響」は本当か?

メディアでは高齢化が経済成長に及ぼす悪影響が強調されている。悪影響の原因は、高齢化による労働力参加率や生産性の低下、あるいは高齢化による貯蓄率の上昇などとされている。 一方で、高齢化と経済成長は無関係だ、という報告もある。 【高齢化は言い訳…

「民主主義の呪い」は先進国にも当てはまるのか?

「過去20年間ずっと民主国は専制国より経済成長率が低い。民主主義は崩壊の瀬戸際だ。我々は『民主主義の呪い』かけられた」という言説を頻繁に目にするようになった。 「民主主義国家の方がコロナ死者が多くて去年の経済成長率も低い」と示してみたら、よく…

バイリンガル王国オランダですら、英語だけでやっていくのは難しい

オランダは非英語圏の中で一番英語ができる国であり、国民の9割が英語を話す。 加えて、言語自体が似ているので蘭英の機械翻訳も高性能である。 そのため、電話やオンラインを活用して生活している分には蘭語が使えなくてもほぼ困らない。 しかし、実際に外…

なぜ人手不足なのに賃金が上がらないのか

人手不足のパターンは二通り。 労働者への需要が上昇するパターンと供給が減少するパターン。 労働者需要上昇パターン 高度経済成長などがこのパターン。 市場が成長しているため、賃上げを通じた労働者確保により現状以上の利益確保を見込め、賃上げへの圧…

エンジニア海外就職において現地語はどの程度重要か?

ソフトウェアエンジニアが非英語圏で就職する上で、現地語が扱えないことはどの程度就職先の可能性を狭めるのか。 筆者はオランダ在住のため、オランダを例に調査する。 結論 先に結論を。 非英語圏の中で英語通用度が一番高いオランダでさえ、求人の約5割…

子育て世帯に一千万を配っても少子高齢化は止まらない(ハンガリーの事例から)

www.theguardian.com (頭脳流出などもあり)深刻な少子高齢化に苦しんでいるハンガリー。子供3人以上の家庭に400万円近く配っているにも関わらず、合計特殊出生率は1.48らしい。なお、ハンガリーの一人あたりGDPは日本の半分以下なので、この400万は日本人…