なぜ人手不足なのに賃金が上がらないのか
人手不足のパターンは二通り。 労働者への需要が上昇するパターンと供給が減少するパターン。
労働者需要上昇パターン
高度経済成長などがこのパターン。 市場が成長しているため、賃上げを通じた労働者確保により現状以上の利益確保を見込め、賃上げへの圧力が働く(=賃上げしても倒産しにくい)。 給与が上がり、モノが売れ、経済規模が拡大する。
労働者供給減少パターン
少子高齢化などがこのパターン。 市場は縮小しているため、賃上げを通じて労働者を確保しても現状以上の利益確保が見込めず、賃上げへの圧力が働かない(=無理に賃上げすると倒産する)*1。 給与が上がらず、モノが売れず*2、経済規模が縮小する。
比較表
需要上昇パターン | 供給減少パターン | |
---|---|---|
人手 | 不足 | 不足 |
賃金 | 上昇:賃上げによる労働者確保で、現状以上の利益を得られる | 硬直:賃上げによる労働者確保では、現状以上の利益を得られない(=賃上げすると倒産するため) |
賃上げした場合 | 利益増加 | 倒産 |
経済規模 | 拡大 | 縮小:賃上げすると商品価格上昇により売上が下がり(または倒産し)、賃上げしないと人手確保できず売上が下がる |
追記:賃金停滞の要因は人口減
マクロ経済学の専門家である東京都立大学の脇田教授は、「賃金停滞の要因は人口減」と主張する。
賃金停滞の「現在」の要因は人口減少だ。コロナ禍でも認識されたように、非製造業、なかでも対人サービス業は雇用吸収力が強い。問題は非製造業に対する需要は、地域の人口の「頭数」に依存することである。バス事業やスーパーマーケット事業が人口減少のもとで、成り立たなくなれば、企業は新卒採用や年功賃金を放棄し、高齢者の再雇用で最低限の業務をこなしてゆくようになる。そうなれば賃上げどころではない。(引用元:給料が安すぎる国・日本…「賃上げ」が絶対必要なのに「賃金が上がらない」本当の理由(脇田 成) | 現代ビジネス | 講談社(3/7))
*1:参考:"Japan's labor shortage and low-wage puzzle", The Japan Times.
*2:賃上げすると商品価格上昇により売上が下がり、賃上げしないと人手確保できず売上が下がる