海外在住研究者のつぶやき

専門外のことについて勉強した内容をまとめます.

家族連れカナダ移住方法まとめ

はじめに

  • 結局欧州に移住した筆者であるが,移住先として当初はカナダも検討していた.
  • そこで,せっかくなので検討の際に収集した情報をシェアする.
  • なお,筆者には家族連れカナダ移住経験がないので,本記事で述べる方法の実現性は検証できていないことをご承知いただきたい.

目次

前提条件

まず,筆者のスペックを述べる.普通の日本人とは状況が異なるため,そのまま参考になる部分は少ないかもしれない.

  • ビザ: 永住権/市民権あり
  • 学歴: 情報系修士(学部・修士ともに日本の大学)
  • 職歴: 日本の民間研究開発職での実務経験が数年ほど
  • 家族: 妻子持ち

次に制約を述べる

  • 家族全員で移住する.「まずは単身で」などは考えていない.
  • 就職では情報系の専門職のみを狙う.別分野での就職は考えていない.

結論

先に結論を述べる.上記前提条件下なら,「ファンディングありの研究系理系修士に進学しつつ,インターンに参加し職歴を積んだ後に就職する」のが良いと筆者は考えた.

戦略

大きく分けて三つ.

  • 戦略①: カナダで博士課程(PhD)へ進学し,就職する
  • 戦略②: 直接就職する
  • 戦略③: カナダで修士を取り直し,就職する

まずは,「戦略①: カナダで博士課程(PhD)へ進学し,就職する」を検討した.

戦略①: カナダで博士課程(PhD)へ進学し,就職する

当初有望案だと考えていた.しかし,カナダのPhDのファンディングは(大学にも依るが概ね)年250万円程度*1と米国と比較すると多いとは言えず,加えてここから学費も引かれ,さらに家賃も高く車も必要なため生活コストが高いことを考えると,年250万円は家族で暮らすには十分とは言えないだろうという結論になった.

余談1: カナダの生活費

余談だが,カナダ都市部の生活費は本当に高い.

https://twitter.com/thoughtsofaphd/status/1205691953595265024

余談2: カナダでのPhD取得後の待遇

実は,カナダはアメリカと異なりPhD取得後の待遇があまり良くない.当然,情報系については下記状況より相当良いと思われるが,PhDの取得はアメリカでほどのアドバンテージにはならないことが想像できる.

「博士課程を修了しても年収400万円」「学部時代の知人がまともな仕事について家まで買っている中,俺らはいつまで『学生』をやっているんだという気持ちになる」(筆者による意訳) (参考: Is a PhD really worth your time and money? - The Fulcrum

また,前述の記事では

「奨学金の問題もある.大学は4年間しかfundingを用意しない一方,修了に4年以上かかる学生が多いからだ」(筆者による意訳) (参考: Is a PhD really worth your time and money? - The Fulcrum

との記載もある.確かにUBCのCSPhDの公式ページによると平均修了年数は「6年」と書かれている.

余談3: Reddit民の見解

筆者と状況が近い人が,カナダへの移住方法についてRedditで質問していた

質問者は情報系修士*2持ちらしい.質問内容の意訳は下記の通り.

質問意訳

  • カナダへの移住戦略としてどちらがいいか?
    • 【選択肢1】カナダでPhDを取ってから就職
    • 【選択肢2】直接就職(ビザはskilled workerとして取得)

様々な回答の中で,筆者が参考になると思ったのは下記.

回答意訳

  • 基本的には理系修士をキープしたほうが,仕事の選択肢が増え,就職しやすい
    • PhDは仕事の選択肢を狭めすぎる
  • ただし,情報系の場合はその限りではないかも

やはり,(アメリカと比べると)PhDという学位は職探しにおいて有利には働きにくいようだ.

戦略②: 直接就職する

となると,選択肢は「戦略②: 直接就職する」「戦略③: カナダで修士を取り直し,就職する」の二つ.普通に考えれば,直接就職の方が良さそうだ.そもそも,日本で理系修士を卒業しているのに再びカナダで修士に入り直す必要などあるのだろうか?

カナダでの学歴は必要か?

結論から言うと,一般には入り直したほうが良いらしい.下記記事によると,「カナダでの学歴がある人との給料の差は2倍」とのこと.また,南米出身でカナダ在住の知人も同様のことを言っていたので事実な部分もあるのだろう.

たとえ日本で理系の大学を卒業したとしても、カナダでの学歴がある人との給料の差は2倍近いと言われています。(引用元: [海外就職を目指す人へ]カナダでエンジニア職を見つけるために必要な3つの条件 – Harry World!!)

そのため,直接就職案は却下とし,「戦略③: カナダで修士を取り直し,就職する」を採用することにした.

戦略③: カナダで修士を取り直し,就職する

カナダでは研究修士コースであれば(博士課程ほどじゃないにせよ)ファンディングがもらえることが多い.概ね年150万〜200万くらいだろうか.家族で暮らすには十分とは言えないが,修士は1年〜2年程度なため,貯金を切り崩すことでどうにか生活できるだろうと判断した.

ところで,カナダで良い職に就くには「カナダでの学歴」以外にもう一つ大切なものがある. それはカナダでの職歴である.

カナダでの職歴を得るには?

下記記事によると,「カナダで働いた経験」は返事をもらう為に必要とのこと.また,それを得るためには(無給)インターンが良いということ.

その後すぐに「カナダで働いた経験」を履歴書に書く事が返事をもらう為に必要であることが分かってインターンの職にも応募した。幸いその面接は簡単に通ってとりあえず無給で働き始めることになった。(中略) その会社でインターンするのと同時に並行して仕事を探していたら、結構返事が来るようになって働き始めて1ヶ月後には最初のジョブオファーを貰うことができた。(引用元: トロントでワーホリ、プログラマとして働くまでの苦難と最高の労働環境 | by Kohei Mikami)

まとめ

  • 「ファンディングありの研究系理系修士に進学しつつ,インターンに参加し職歴を積んだ後に就職する」のがカナダ移住方法としては良いと筆者は結論づけた
  • ただしこの結論は筆者の前提条件下での話
  • 読者の皆様の参考になる部分が少しでもあれば幸いです

追記: 「カナダでの」学歴や職歴が重要、という話。

別記事にしました。→【カナダ移住】「カナダでの」学歴や職歴が重要、という話

*1:当然,数ヶ月の研究インターンをすることで追加で稼ぐことも可能ではあるが,子供が小さいため引っ越しを伴うインターンは難しく,また,有給インターンに受かるかについては不確定要素も大きいためインターンは収入源としては考慮に入れないこととした.

*2:正確には計算機科学系.本記事では計算機科学系もその他の情報系も簡単のため「情報系」と示す.