海外在住研究者のつぶやき

専門外のことについて勉強した内容をまとめます.

メタバースはビジネスの現場で主流になるか

現状、VRベースのメタバース*1は、アーリーアダプターが使用するに留まっており、ビジネスの現場で使用されているとは言い難い。

今後、ザッカーバーグの描く未来のように、VR内ディスプレイ、VR会議、VR展示会などのメタバースはビジネス現場での主流になるのか。 VRヘッドセット Oculus Quest 2 買い、ビジネス関連アプリ一通り試したので感想をシェアする。

結論

ビジネスで使うには正直まだまだこれからという印象。理由は「重量・サイズ」「解像度」。

  • 重量・サイズ: 重くて長時間使用で首が痛くなる。大きくて気軽に持ち運べない
  • 解像度: ディスプレイの代替には現状ならない(e.g., フルHD画面をVRで表示させると文字が潰れて見えない)

将来性を強く感じるが、ビジネスで一般的になるにはあと10年はかかりそうという印象だ。

詳細

以下、個別に感想を。括弧内は試したアプリ。

VR内ディスプレイ(Immersed)

現時点では実用的ではない。重量、解像度の問題を直接的に受けるため。 文字が潰れて読めないし、首が痛くなるので、長時間の使用は現実的ではない。 ただし、方向性は正しいと思うので10年後にはそれなりに主流になってそう。 なぜなら、物理ディスプレイ不要という強烈な金銭面での導入インセンティブがあるので。

VR会議(Horizon Workrooms)

既にそこそこ実用的。 ホワイトボードは書きやすいし、PCも持ち込めるし、没入感もそれなりにあるし。 しかし、VR会議アプリの使用には参加者全員がVRデバイスを持っている必要がある*2が、これには金銭面でのインセンティブがなく、普及には時間がかかることが予想される。

VR展示会、国際会議など(Spatial, VRChat)

既に実用的。特に国際会議において自由に移動できかつソーシャライズ可能(ネットワーキングにおいてVRが有用な理由は別記事を参照)というのは大きい。現時点での主流であるGatherと比べると大幅な質の向上。

実は、日本では既にメタバース内で学会が開催されている。 意外に知られていないことだが、日本はメタバース/VRの先進国である。

まとめ

金銭面での導入インセンティブが無いため、VR会議やVR展示会のためだけにVRヘッドセットを個人で買う人は少ないと予想される。 そのため、VR内ディスプレイの技術が成熟するまで(i.e., 解像度が十分に上がるまで)はメタバースはビジネス現場の主流にはならないと筆者は予想する。

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*1:本記事では Oxford Language Dictionary の定義 "Metaverse is a virtual-reality space in which users can interact with a computer-generated environment and other users" に従い、VRベースのメタバースについて記す

*2:厳密には従来のディスプレイでも使用可能だがボディーランゲージを使うのが難しいため、会議への参加度に差が出てしまう可能性あり